条件反射制御法研修会@ニプロ(株) 中元医師と尾田さんと
6月15日(金)に、滋賀県にある「ニプロ株式会社、総合研究所」で行われた「条件反射制御法研修会」に参加してきました。
なんだか難しそうな名前ですが、
条件反射制御法というのは、例えば、アルコール、覚せい剤などの薬物、ギャンブル、パチンコetc…の嗜癖行動について、「依存症」の状態に陥ってしまっている人に対する新たな治療法です。
私は弁護士で、私が関わるのは覚せい剤を主とする薬物依存症であり、犯罪にならないアルコール依存症やギャンブル依存症の方については関わっていないので、ここでは、覚せい剤依存症の場合を前提にお話します。
(ただし、条件反射制御法自体は、薬物依存以外の病気に対しても広く使われる治療法なので、お間違えなく。
また、私のこのブログの説明は、学術的なものではなく、まったくの素人説明なので、その点はご容赦下さい。)
ややこしいのですが、あえて簡単に説明すると、人間には3つの条件反射があります。
①無条件反射(梅干を口に入れると唾が出る)→ 生来的なもの
②第1信号系条件反射(梅干を食べる習慣がある人は、梅干を見ると唾が出る)→ 行動の反復によって成立・強化されるもの
③第2信号系条件反射(血圧が高いから、梅干を食べるのはやめておこう)→ 思考のこと。人間だけが持っている
覚せい剤を使用し続けていると、覚せい剤を打つまでの一連の行動をすることで(人によって、決まったやり方があるものです)、覚せい剤を使ったときの快感(生理的報酬)が得られるということが繰り返され、②の第1信号系条件反射ができあがってしまいます。
すると、他の人にとっては、何でもないことでも、その人にとって覚せい剤に関連している刺激が入ると、覚せい剤を使いたくてたまらなくなってしまうのです。
例えば、ペットボトルの水を見ても覚せい剤がやりたくなったり(これで覚せい剤を溶いていたから)、まとまったお金が入ったり、お給料が入ったりすると、覚せい剤を買いたくなったり(いつも、まとまったお金が入ると売人に電話していたから)という具合です。
この②の条件反射のパワーは、③の思考のパワーよりはるかに強いので、どうしても抵抗しきれず、「わかっちゃいるけどやめられない」とばかりに、また覚せい剤を使ってしまうのです。
だから、覚せい剤使用者は、受刑し終えて刑務所から出てきても、数か月は「使うまい!」と一生懸命頑張りますが、結局は使ってしまって、また逮捕されてしまうのです。
そこで、この出来上がってしまった条件反射を弱めるとともに、「覚せい剤を使えないぞ」という条件反射を意図的に作り上げることで、覚せい剤に関連する刺激にさらされても、使用せずに耐えられる状態を作り上げていく治療法が、「条件反射制御法」なのです。
何のことだかわからないかもしれませんが、これ以上の説明は、ブログでは無理なので、このくらいにしておきます。
具体的な治療としては、ニプロ株式会社さんが開発された「疑似注射器」(注射器の中に赤い偽の血のようなものが出る)を使って、注射を打つ真似を何度も繰り返して、注射を打つという行為をしても、覚せい剤の快感がない状態を身体に覚えさせたり、
自分が覚せい剤を使っていた時の様子を詳細に思い出したり、作文に書いたりして、刺激に耐えられる訓練をしたり、
「私は、今、覚せい剤をやれない」という言葉とともに一定の動作を繰り返して、この「キーワード・アクション」を行ったら、覚せい剤を使えない時間が続くのだという条件反射を新たに身体に覚えこませたりします。
そうして、覚せい剤にまつわる刺激にさらされても、覚せい剤を使用しないで済む状態を作り上げていくのです。
当日は、千葉県にある下総精神医療センターの精神科医平井慎二先生が講師でしたが、医療機関関係者以外にも、矯正関係の方々や、弁護士なども来ていました。
写真は、平井先生の教え子で現在は汐の宮温泉病院で条件反射制御法による治療に取り組まれてる精神科医中元総一郎先生(右)と、薬物依存回復支援団体であるNPO法人アパリの事務局長尾田真言さん(左)です。
そして、私が中央です。
カメラのシャッターを押してくださったのは、京都ダルクの加藤武士さんでした。
加藤さんが笑わせて下さったので、中元先生も私もにっこり笑っています。
中元先生ってば、3割増しくらいハンサムに写ってますよ!
実は、この写真の3人で連携して、覚せい剤事件の刑事被告人の保釈をとって、汐の宮温泉病院(閉鎖病棟)へ入院させて、条件反射制御法の治療へつなげるという活動をしています。
なかなか症状の重い方が多いのですが、頑張っています。